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 韓国各地に伝わるさまざまな伝統文化の魅力を伝えるフェス「JEONJU INT’L SORI FESTIVAL
관리자 | 2018-11-13 11:36:28 | 326


 韓国各地に伝わるさまざまな伝統文化の魅力を伝えるフェス「JEONJU INTL SORI FESTIVALJISF)」が今年も10月3日から7日までの5日間、全州のSORI ARTS CENTER OF JEOLLABUK-DOで開催された。


 JISFはイギリスの老舗音楽雑誌「SONGLINES」の「World's Best 25 International FestivalsWorld's Best 25 International Festivals」部門にノミネートされたこともあるほど国際的に知られるフェスであり、東京に住む音楽ジャーナリストである私の耳にもその噂は入っていた。外国人ジャーナリストからすると、何よりも魅力的なのは韓国の伝統芸能のラインナップ。今回はPansoriの名手たちによる素晴らしい公演に加え、韓国各地の5種類のGutの公演も行われた。国外に住む者がGutを観る機会はなかなかない。私も以前から文献や音源などでGutに触れていたものの、本物の儀式を体験するのは初めての機会である。


 また、このJISFは韓国伝統音楽のフェスであると同時に、世界各国の音楽家たちが出演するWORLD MUSIC FESTIVALという一面も持つ。今年もさまざまな国々の音楽家が全州に集結した。


 


 そうしたなかでも一際注目を集めていたのが、EBSの音楽番組「スペース共感」と共同企画されたEBS SPACE : TAIWAN FOCUS X TRIO REIJSEGER FRAANJE SYLLA」という公演だ。


 この公演では2つのパフォーマンスが披露された。ひとつは「TAIWAN FOCUS」と題された台湾の音楽家たちによるパフォーマンス。Principal of the Taipei Chinese OrchestraであるWANG YING-CHIEHErhuを中心に、CHANG, YU-HSINPercussion)、LIN, KO-WEIPiano)、Uz AZeRSitar/Vocal)、TSENG,YUAN MINGDrum)というメンバーで構成される。いずれも台湾音楽界のみならず、国際的に活動をする音楽家たちだ。


 また、もうひとつのパフォーマンスが、TRIO REIJSEGER FRAANJE SYLLAというトリオによるもの。Free Improvisationの世界で活躍し、近年は世界各地の民族音楽家とも上演しているErnst ReijsegrerCello)、端正なプレイがヨーロッパのジャズ・シーンで高く評価されているHarmen FraanjePiano)、西アフリカのセネガル出身であり、KongomaSenegalese lamellophone)などの奏者でもあるMola SyllaVocal)という一風変わった編成のトリオだ。彼らはこれまでにドイツの名門ジャズレーベルであるWinter & Winter Recordsから『Down Deep』(2013年)、『Count Till Zen』(2015年)という2枚のアルバムをリリース。この編成で各国をツアーしており、その相性の良さは証明済みだ。


 なお、このEBS SPACE : TAIWAN FOCUS X TRIO REIJSEGER FRAANJE SYLLA」はフェス3日目にあたる5日(金曜日)に行われたが、この日の全州は台風直撃。残念ながら野外ステージはすべてキャンセルとなってしまったものの、こちらの公演は無事開催。会場は熱心なオーディエンスで埋め尽くされた。


 


 1部はTAIWAN FOCUSのステージである。WANG YING-CHIEHErhuを中心とするアンサンブルだが、約40分に渡るパフォーマンスはまるで組曲のようにドラマティック。なかでもErhuLIN, KO-WEIPianoが響き合う際の美しさは特別。そこからは汎アジア的(Pan-Asianism)ともいえる叙情性が浮かび上がる。また、PercussionDrumが織り成すリズムからは現代的なジャズ表現からの影響も感じさせられた。ここにUz AZeRSitar(インドの伝統弦楽器)が重なり合うのもとてもユニークだ。最後の一音が鳴り響いたあと、オーディエンスからは爆発的な拍手が巻き起こった。


 2部はTRIO REIJSEGER FRAANJE SYLLAの出番。PianoDrumBassというのがピアノ・トリオの典型的編成だが、彼らの場合はPianoCelloMola SyllaKongomaや声が加わる。その意味では、ピアノ・トリオというスタンダードな編成の可能性を拡張するものともいえるだろう。


 パフォーマンスが始まった瞬間からジャズとアフリカ音楽の中間のような心地いいグルーヴが溢れ出す。彼らはアフリカ/ヨーロッパという異なる民族的/文化的背景を持つが、ひとつひとつの音は反発し合うのではなく、そっと寄り添い、歌と音でコミュニケーションをとっていく。なかでも印象的だったのはMola Syllaの声。セネガルは韓国と同様に独自の「歌」の文化を持つが、ひと声で音の風景を変えてしまうMolaの歌声は、Youssou N'Dourなど世界的な大歌手を輩出してきたセネガルならではのものだ。3人による音の会話は楽しげでリラックスしたもので、彼らの顔にも時たま笑顔が見られる。演奏終了後、1部に続いて巻き起こった大きな拍手と観客たちの笑顔が印象的だった。


 


 WORLD MUSICという言葉は80年代半ばのヨーロッパで生まれた。当時のLPやカセットテープを販売するうえでのジャンル名として考案されたものであり、いわば音楽市場における必要性から生まれた言葉でもあった。80年代後半から90年代にかけてWORLD MUSICが大きなブームとなると、欧米人のプロデューサーたちはこぞってアフリカや中東に足を運び、現地のミュージシャンたちと作品を制作した。そのなかには名作とされているものも多い一方で、植民地主義的という批判を受けたものもある。


 さまざまな民族的背景を持つ音楽家たちは、どのようにコラボレーションすことができるのか? WORLD MUSICという言葉が生まれた80年代以降、さまざまなプロデューサーや音楽家たちがその問いと向かい合い続けてきたが、今回のEBS SPACE : TAIWAN FOCUS X TRIO REIJSEGER FRAANJE SYLLA」もそうした試みのひとつと言えるだろう。


 現在、 「WORLD MUSICの本場」であるヨーロッパでは民族差別や移民の問題が深刻化しており、あるべき多様性についての議論が重ねられている。私たちはどうやってこの地球上で共存することができるのか。ブツかり合うのではなく、対話し、寄り添っていくような今回のパフォーマンスにそのヒントが隠されていたのかもしれない。


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